鈴江俊郎 戯曲
牛乳で夜を染めたい
舞台は定時制高校の夜の教室。
ここに来た動機や事情はさまざまだが、多くの生徒はなにか心に屈託を抱えている。
書道部を全国一にしようとしている教師は教室でも若者たちの尊敬を集めている。
この学校に出会えて救われた、という生徒が誕生日になにかプレゼントしよう、とクラスで討論を始める。
定時制特有の感謝のパターンが恥ずかしい、と拒む生徒。
恥ずかしがること自体が定時制を引け目に感じてるってことだ、誇りを持て、と反論する生徒。
不登校による学業不振から定時制に入学してきた三人組は、
やはり今でも学校生活になじめるかどうかのぎりぎりでそれどころではない。
中学時代に不良と呼ばれ、あらゆる暴力沙汰をやりつくしてきた男子生徒。
今は妻子を養いつつ通っている二十三歳の兄貴肌の彼は、
生活苦のためにここに来た女生徒が、バイト先の店長と不倫のあげく妊娠してしまったことに気づいてしまい、相談に乗っている。
皆、プレゼントどころではないのだ。
一時間目が終わるともう夜だ。
長めの休憩時間、あわててパンをほおばるその教室は、それぞれの屈託をただありのままに受け入れてくれる。
いつものどにパンをつめて噴出してしまう牛乳。
白く染められてしまう机、床。
夜もまるごと染めんばかりの勢いの彼らの大慌ての青春模様を、繊細なタッチで描く。
彼らはささやかにでも感謝の気持ちを表現できるのか?
達成目標も繊細なのだ。
2005年12月 伊丹アイホール演劇ファクトリーのための書き下ろし作品
80分
8人(男3・女5)あるいは(男2・女6)
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