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鈴江俊郎 戯曲

火花みたいに

 

急行の停車する駅から少し離れたところにある、
長年のフリーター暮らしに疲れた女性が一念発起してリーダーとなって開業したばかりの弁当屋。
立地条件は商売に向いているとは言えず、なにか明確な売り物が必要だ。
無農薬の自然食品ばかり使う作戦、
変化に満ちたメニュー、
さまざまな特色ある食材、
いろんな工夫を凝らそうとするがどれもこれもうまくはいかない。


さまざまな事情でフリーター暮らしに疲れた若者たちが集まって働いている。
リーダーの娘は牢獄みたいな女子高を中退して頼りない母のアシスタントとして働いている。
バンドで有名になりたいという夢が破れて目標のない暮らしをしている女。
優秀なサッカー選手でありながら大学のスポーツ推薦で入学した選手とのレベルの差を見せつけられ退部した男。
そんな彼に中学時代憧れて、銀行を退職し、彼のいる弁当屋にやってきた女。
さまざまな仕事を経てきたがどの仕事も途中で続かなくなって不安に襲われて動けなくなってしまう姉。
姉が回復するまでそばにいないではいられない、とともに働く妹。
リーダーはそこにいる不安定な若者に、そして自分に言い聞かせるように働くほかないのだ。
自分であることの確認さえできれば。
ささやかな自負さえもてれば。
大きな夢を持たないと支えられなくなっている自分たち、
そしてかなえられない大きな夢の前で挫折感をかみしめないでは暮らせない自分たち。

そんなことをなんとか克服したい。


経営は苦しく、商売のために不誠実な作戦も潔しとはできず、
彼女たちの店は追い詰められていくばかりだ。 
しかし、心の弱った現在の社会にささやかな心の支えは生まれるだろう。
彼女たちはきっとあきらめはしない。
挫折を乗り越えた再生の物語を彼女たちは紡いでいくはずだ。
心弱い若者たちのもてあましてしまうような焦りやこわばりのありさまを微細に、
こっけいに描きだす。

2002年10月 劇団八時半公演
90分
7人(男1・女6)

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