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鈴江俊郎 戯曲

王様は白く思想する

 

ギタリストの卵、伊東は恋人と同棲している。
彼はこのところギターが弾けないでいる。
長年組んでいたバンドメンバーが数カ月前に全員事故死したのだ。
演奏への動機付けそのものも失ったような伊東。
死者たちはそれでもからかうように時折部屋に現れ、
生前と変わらないにぎやかさで議論する。
伊東はその時間をこよなく愛するようになっている。
恋人は焦っている。
立ち直れないでいる伊東を憎む気持ちはほとんど嫉妬に近い。
人は一人一人王様で、ささやかな楽園を望むのに白い霧の中を進むような感触しか得られないでいる。
王様は手応えをつかめるのだろうか。
ささやかな期待をこめて、伊東は今日もギターに向かう。
明日も、明後日も、そうやってもがくのは希望のためだ...

1999年4月 文学座アトリエ公演
100分
6人(男4・女2)


…雑誌「せりふの時代」1999年春号掲載

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