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鈴江俊郎 戯曲

山脈をのぼる気持ち

 

ギャンブルで借金を膨らませてしまった旧友が男を訪ねてくる。
逃走資金を貸してくれと言うのだ。
貸したくない男。

そこへ旧友の恋人までやってくる。
連れて逃げてくれと言う。
恋とは理性では割り切れない情熱で、どう転んでも不合理な成り行きは予想できるのにそれを否定する気になれないという。
男はわからなくはないと感じる。
男は昔その女のことが好きだったのだ。
心の中にある割り切れない情熱に手を焼くのは一人じゃない。
けれどその情熱を信じたい、とも思うのだ。
旧友は翌朝、一人で逃げた。
残された二人は昔三人で行った信州の高原を思い出す。
山脈は遠い。
けれど歩いているうちにそれは近づかないとも限らない。
登れないとも限らないのだ。

1997年10月 劇団八時半公演
70分
3人(男2・女1)

 

…八時半通信10号掲載

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