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鈴江俊郎 戯曲

私の音符は武装している

 

とある大学の文学部、心理学講座の夏の合宿が終わった。
参加した大学生、大学院生、OBたちは合宿の行われた山の家からさらに奥にあるロッジに集まっている。
実はこれから二次会、彼女たちだけで息抜きの山登りに行こうという計画なのだ。
毎夏この合宿を楽しみにしているOB。
人間不信に悩んだ学生時代が良くも悪くも今の自分をつくってくれたのだ、と今は感謝の気持ちでいっぱいらしい。
彼女が計画した登山はかなり本格的なもので、
すでにここに来るまでに足をくじいたメンバーもいる中では現実性が薄い。
しかしなぜかOB一人完全な全員での登頂にこだわる。

ゼミに感謝を示したい。
彼女は皆に登頂の感動を味あわせてあげたいのだ。
おおむね心理学の講座に集まるような学生も、教授も、
そもそも精神に不具合を感じる傾向の強い人の集まりだ。
メンバーたちは次第に彼女の要求に恐怖を感じるようになる。
結婚式を間近に控えたメンバーのための音楽の練習をしかたなく繰り返すメンバー。
数日がたつ。登頂がすまないと帰してくれない異常なOBの行動に、メンバーは二派に別れる。
ふもとに引き返そう、とする派といっそ登頂しよう、とする派と。
閉じ込められたような狭い山の小屋で、
皆の心は次第に武装を強めることになる。
音楽は次第に完成度を増していくようだ。

2005年8月 伊丹アイホール / 9月 下北沢ザスズナリ 劇団八時半公演
80分
6人(女6) 

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